業績と時短を両立させる最強のチームビルディング式働き方改革

お問い合わせ

COLUMNコラム

2021.07.20

令和3年度助成金政策から見えてきたもの 〜アフターコロナの貴社の戦略は?〜

2035年問題という言葉をご存知でしょうか。3人に1人が65歳以上となり、5人に1人が75歳以上となる事が予測される14年後の未来です。日本の少子高齢化は、コロナ禍であっても待ったなしで進んでいます。一方、新型コロナウィルスの影響は、ワクチン接種は順調に進んでいるように見えるものの、オリンピックを前に緊急事態宣言が再発令され、感染状況は悪化しており、まだまだ終わりが見えません。

 

助成金も新たな年度が始まり、東京都など地方の奨励金を含め、予算の概要や支給される要件などが出揃いました。助成金の政策は、国のメッセージでもあります。昨年から1年以上コロナ禍で申請が続いた雇用調整助成金は、飲食業や業況が厳しい会社を除き、徐々に縮小予定です。雇用を守る為の施策は、休業から在籍出向など労働移動へのシフトが促されています。

 

では、今年の助成金のトレンドはどのようなものでしょうか?

大きくは、少子高齢化対策を含めた働き方改革にまつわるもの。
もう1つはアフターコロナを見据えたものとなります。

 

各種助成金について

1.コロナ禍で進んだテレワーク

昨年、コロナ禍で一気に進んだテレワーク。
こちらに関する助成金は今年も健在です。人材確保等支援助成金の一部として、かかった費用のおよそ半額が助成されます。今年は、テレワークコースに関わらず、全体的に離職率の目標など生産性要件がプラスされている事が特徴です。

 

東京しごと財団の「テレワーク促進助成金」も募集中です。

 

2. 今年イチオシの「65歳超雇用推進助成金」

高年齢就業確保措置とは、働く意欲がある高年齢者がその能力を十分に発揮できるよう、「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」(高年齢者雇用安定法)の一部が改正されたことにより、70歳までの就業機会の確保について、多様な選択肢を法制度上整え、事業主としていずれかの措置を制度化する努力義務を設けるものです。

 

60歳以上の雇用保険被保険者が既にいる場合は、「65歳超継続雇用推進コース」がオススメです。定年の延長、66歳以上の再雇用年齢の延長などを就業規則に定める必要があります。60歳以上の社員がいなかった場合でも、貴社の高齢者の戦略として、求める職務や職責、役割、それに見合った賃金、評価、キャリアを含め、考える機会にして下さい。

 

「高年齢者評価制度等雇用管理改善コース」や「高年齢無期雇用転換コース」や、新設された「高年齢労働者処遇改善促進助成金」なども是非チェックしてみて下さい。

 

注)上記「65歳超継続雇用推進コース」については、令和3年9月24日(金)をもって新規申請の受付が終了いたします。

参考
https://www.mhlw.go.jp/content/000833329.pdf

 

 

ここでちょっと注意していただきたいことがあります。
皆さんは1つ年をとるのがいつかご存知ですか?
誕生日でしょうか? 誕生日の前日でしょうか?

 

誕生日の前日、というのが法律上の答です。

 

たとえば、7月1日が誕生日だとしましょう。法律上では、誕生日の前日の6月30日の時に24時に1つ年齢が上がって60歳になります。

 

御社の定年は何歳で、いつが退職日になっているでしょうか?
退職日でよく見かけるのは、誕生日、誕生日の前日、誕生日が属する月の月末などです。
もしも定年が60歳で、退職日が「60歳に達する日の前日」となっていたらちょっと問題です。
60歳に達する日の前日は6月29日となり、この日はまだ59歳なので法令違反になってしまいます。細かいことですが、注意して下さいね。

 

 

 

3.少子化ストップへ「両立支援助成金」

たくさんのコースがありますが、やはり今年は「子育てパパ支援助成金」と新設の「不妊治療両立支援コース」でしょう。

不妊治療両立支援コースは、男女を問わず、対象者がいる事が必要です。

 

まず、社不妊治療と仕事の両立に関して、労働者が求めている制度や支援策についての実態を把握し、企業の実態に応じた取組を検討し、制度を作ります。

 

不妊治療を受ける社員から働き方の希望などを聴いた上で、制度の利用の予定や、その間の業務分担の見直し等の検討も含め、治療と両立しやすい環境整備を図るためにプランを策定し、制度を利用し、申請します。

 

制度を整えたその先には、育休を取るのは当たり前、お互い様だね、と言えるような文化や風土を目指せると良いですね。

 

来年は男性育休の制度も改正されます。是非今から男性育休の啓発をしませんか?

 

4.引き続き人気の「キャリアアップ助成金」

最も取り組みやすい、以前から人気の伝統的な助成金です。まずキャリアアップの計画を立て、有期契約の社員を無期雇用の社員、または正社員に転換し、その時に一定の率以上賃金がU Pすると助成対象になります。正社員等への転換等ついて、転換前に就業規則に定めておく必要があります。

 

通常は有期の契約社員の期間が6カ月間必要ですが、コロナ特例で、それ未満の期間の紹介予定派遣等でも対象になりました。コロナで離職した人が、未経験の業界に再就職した場合などにも、有効な助成金です。

 

同一労働同一賃金の裁判例からも分かるように、非正規社員であってもキャリアアップが出来る仕組みがあったり、働き方を選択出来るようになっている事は、社員のモチベーションアップにも有効であり、採用などでも選ばれる会社になるのではないでしょうか。

 

5.産業保健関係助成金

テレワークが増え、メンタル不全者の相談も耳にするようになりました。兼業・副業労働者の健康診断助成金に加え、従来からあるストレスチェック実施促進の為の助成金なども上手に利用して下さい。

 

自社にあった助成金を探してみましょう

 

「弊社にちょうど良い助成金はありますか?」と尋ねられる事がよくあります。そんな時には、現状の社員の皆様の状況を頭に思い浮かべつつ、少し先の予定や、社長が考えている未来のイメージや、何に力を入れているかをお聞きしています。

 

先日も、ある経営者の方が、定年後の再雇用についてはあまり積極的ではないけれど、子育て期の社員に関しては、働き続けることを諦めて退職してしまうことがないように、色々な選択肢を充実させたいと言っておられました。子供を持つ社員が働きやすいように、時短勤務だけでなく、フレックスや週休3日も選択してもらえるようにしたい、というお話でした。

 

 

働き方改革は、休み方改革でもあります。コロナ禍で急に保育園の自粛要請があって、子供を預けられない社員のために特別休暇の仕組みを作った会社もありますし、テレワークが進んでフルリモートが基本となり、地方での採用にも力を入れたいとおっしゃる社長もおられます。その他にも、コロナワクチンの副反応があった場合の休暇制度を導入した会社、同一労働同一賃金のために福利厚生制度について再度考えた派遣会社、障害者雇用にチャレンジした会社など、いろいろな会社があります。

 

助成金を上手に利用することで、制度も整えられ、会社がもっと良くなります。制度は生き物なので、一旦作ったからといってそのままにはせずに、状況に応じて常に変えていく必要があります。また、制度は導入することよりも、きちんと運用することがより大切です。

 

育児や介護など家庭事情を抱える社員は多く、そうした家庭事情と仕事の両立を支援しているという企業姿勢やメッセージを企業トップや管理職から、あらゆる機会を活用して社員に伝えることも大切です。

 

未来の姿は会社よってにそれぞれです。トレンドに流されず、貴社のありたい未来を描いて下さい。そして、その未来の姿に近づけるために、必要であれば、助成金を活用して制度を作ってみてください。

 

参考

助成金はいろいろあるので、どんなものが自社に合うのか、どう探せばいいのかわかりにくいこともあるかと思います。
厚生労働省の検索ツールはわかりやすいので、是非利用してみて下さい。

○厚生労働省 助成金検索ツール

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/index_00007.html

 

 

 

 

 

鎌田 良子

鎌田 良子

特定社会保険労務士

担当地域:全国

週4正社員®︎制度を導入する社労士法人に勤務し、自ら新しい働き方を実践中。法律論だけでなく、経営者が大切にしている事を軸に、社員の強みが活かされ、会社が発展するしくみ、最適なアプローチを提案しています。