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COLUMNコラム

2021.12.15

男性育休のススメのその先

 

テニスの練習試合中の出来事。ダブルスのペアで私は後衛、いつものペアではない人と組んでいました。ふわりと上がったチャンスボールに反応して下がってきた前衛の彼女に、「いける いける」と声をかけたのですが、次の瞬間ボールは私と前衛の間にポトっと落ちました。後ろが見えていなかった前衛の彼女は、私の声を「(私が)行ける 行ける」と捉え、私が走ると思ってボールを譲ってくれ、お見合いとなってしまったのでした。

 

コミュニケーションって難しいですね。いつものペアであれば、私の「いける=頑張って決めて!」が共通の合言葉なのですが、ペアの相手が変われば意味合いも違ったのです。

 

育児介護休業法が改正されます

育児介護休業法の改正(産後パパ育休関係)を1年後に控え、早くも就業規則の規程例や個別周知・取得意向確認の書式が厚生労働省より公開されました。驚きの早さです。今回の改正は、通常の育児休業とは別枠で産後パパ育休が出来た事や、分割取得が出来る事を含め、より柔軟で画期的な改正なのですが、最大のポイントは改正が段階的である事です。

 

2022年4月施行の第一段階は「我が社にも両立を支援するためのこんな制度があります。育児休業はママだけでなくパパでも取れますよ。お金の面も心配ですよね。給与や社会保険料や雇用保険の給付はこうなります」と、会社が社員に周知をし、「それだったら取ってみようかな」と迷っているプレパパに面談などで後押しをする事から始まります。

 

つまり、会社と社員の間により丁寧なコミュニケーションが必要となる訳です。公務員の友人が「そこまでやらないといけないのかしら」と本音をこぼしていましたが、日本ではそこまでやらないと男性の育休取得がなかなか進まない現状があります。

 

今回は、育休を取得するかどうか、本人に意向確認をすることも義務化されます。決して取らせる事が義務なのではなく、意思確認が義務です。是非、仕組みとして育休の相談窓口を作って、「奥さんが安定期に入ったら人事部に相談して下さいね」という、メッセージを発信して頂きたいと思います。

 

相談窓口となるのはもちろん直属の上司でも構いませんが、直属の上司の場合、いくつか懸念事項が予想されます。1つは、常日頃から忙しい部署の場合「誰かに仕事を頼む事になるのが申し訳ない」という気持ちから、社員が「育休なんて取れないに違いない」と思い込んでしまう可能性。

 

もう1つは、上司が「プライベートな事を聞いたらハラスメントになるのではないか」と遠慮してしまうケースなどです。もちろん、本人が話したくない事を無理に聞きだすと、ハラスメントとなります。日頃の関係性が問われる場面でもあります。

 

国が男性育休を促進するわけ

ここで、国がパパ育休促進に至った経緯を再度思い出してみましょう。少子高齢化が進む現在、出産・育児などの離職を防ぎ、希望に応じて男女共に仕事と育児等を両立出来る社会の実現が求められています。

 

特に男性の場合、希望したけれども育休を取得できなかった人が3割を超えているというデータもあり、女性に比べて男性は育休を取得できていないのが現状です。

 

男性、女性に限らず、さらには育休に限らず、高齢者雇用や病気との両立、介護との両立など、いつ誰が急に休む事になっても、対応できる仕組みが今後は益々求められます。仕事の属人化ではなく、仕組みとして、みんなで成果を出す事、チームで働く事、他の人でも業務が回るようにする工夫が必要です。その為には、日頃からジョブ、タスクの切り出しや「見える化」を進めていく事が重要です。その上で、前例にとらわれず、いつもと違った目線で、順番や改善すべきポイントがないかどうかもあわせて見直してみる事も大切です。

 

私も現在週4正社員®️制度の会社で働いており、ペーパーレスの為の業務手順の見直しや、ダブルキャスト化を進めているところです。

 

今回の改正では、産後パパ育休の場合など、労使協定の定めによっては、休業中でも少し働く事が出来る場合があります。労使協定とは、労働者と事業主の約束です。原則は休みだけれども大切な会議だけは出席するなど、引継ぎを含め、調整が必要となる場面が多く出てきそうです。

 

私自身、前職で仕事と育児の両立以前に、妊娠と仕事の両立に悩んだ事があります。結局出産の為に退職したのですが、マタニティブルーや産後うつに近い状態も経験しました。

 

当時は仕事が忙しい夫の帰りも遅く、自分にも全く余裕がなく、実家を頼らざるをえませんでした。今、20年前のあの時の自分に「全てを抱え込まないで」と言ってあげたいです。この経験は、私がその後社会保険労務士になった原点となりました。

 

「助けて欲しい」と言える人が近くにいる事が、出産や育児をしている女性にとってありがたい事は昔も今も変わっていないでしょう。男性育休が進む事によって、今も一定数ある女性の出産退職が減っていく未来を願っています。

 

社員と丁寧なコミュニケーションを

コロナ禍によって、立ち合い出産や里帰り出産が難しくなっていることもあるでしょう。上の子の世話があったり介護する家族があったりと、個々の事情も異なります。出産、育児の途中で、当初の想定と違う事が出てくることもあるでしょう。育休をとったから終わりではなく、男性社員から、時間外労働や深夜労働の免除申請などがある場合にも、本人との丁寧なコミュニケーションが必要となります。

 

私も最近、顧問先や自分の周囲で、育休終了時期の繰り下げや、子どもが3歳を過ぎても短時間勤務をしたいという希望がありました。部下との面談では、子供達の未来も含めて、どうすれば幸せに繋がるのか、面談でお互いの合意点を探しました。

 

丁寧に今後について話し合う時間を持つと、その間はほかの業務ができなくなるので、一見すると人件費が余分にかかります。ただでさえ人手不足の時に追加のコストは勘弁してほしいという声が聞こえてきそうですが、社員の働きやすい環境を作ることで、生産性が上がる事も多いと感じています。

 

組織風土や企業文化はなかなか変わりません。なので、プレパパやプレママが貴社に出現した時こそ変革のチャンスと思って下さい。「法改正で義務になってから対応しよう」ではなく、まずは今から出来る事に取り組んでみる事が重要です。

 

コロナ禍で、テレワークも増え、日本全体の元気がないと感じる事があります。みんなで力を合わして経験は、現状を打破する可能性を秘めています。パパ育休を導入することで助成金を受けられたり、「子育てサポート企業」としてくるみん認定されることで会社のイメージを上げるチャンスにもなります。

 

法改正をきっかけに社員にとって理想の職場について考えよう

 

厚生労働省の育児休業取得の記載例には、「上司からのメッセージ」や「社長からのメッセージ」欄もあります。上司や社長は、子供を持つ親の先輩として、是非ご自身の経験談も含めて、後輩のパパ社員に真摯に話をしてほしいです。成功例だけでなく、むしろ失敗談も歓迎です。

 

上司が「部下がプライベートを話してくれない」と悩んでいるケースが多くありますが、是非上司からオープンに話してみてほしいと思います。「あの頃は男性の育休なんて考えられなかった」という上司と、今の男性社員に価値観の違いがあったとしても、それらも含めてざっくばらんに会話し、お互いの価値観の違いを認めることが、企業風土を変えていくための第一歩となります。

 

男性育休の取得率について、我が社の目標は○○%などと決めるのも良いでしょう。しかし、数字だけ達成するのではなく、自分の会社では「どのような状態になっていれば」成功と言えるのかも是非言語化してみて下さい。

 

本社が率先して取得する事も大切ですが、忙しい現場であっても、育休取得の希望者がいた場合に、忙しいから取れないと決め付けるのではなく、「どうしたら取れるのか」を是非考えてみてほしいです。

 

法改正の施行までにはまだ1年あります。今からそれまでのロードマップを描いて下さい。法律対応を目的とするのではなく、育児休業を含めて「全社員にとってどのような職場が理想なのか」を話し合う場を作り始めて下さい。どこから始めたら良いかわからない場合、私達が力になります。

 

厚生労働省ご参考

https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/000850154.pdf

 

 

鎌田 良子

鎌田 良子

特定社会保険労務士

担当地域:全国

週4正社員®︎制度を導入する社労士法人に勤務し、自ら新しい働き方を実践中。法律論だけでなく、経営者が大切にしている事を軸に、社員の強みが活かされ、会社が発展するしくみ、最適なアプローチを提案しています。