働き方改革が始まり、その後のコロナ禍によって、通勤が当たり前だったのが、在宅勤務やオンラインでの会議や研修も増えるなど、私たちの働く環境は大きく変わってきています。
そんな状況でも以前と変わらず、会社にはリーダーがおり、リーダーシップを発揮してチームを導いていくことが求められています。
では、このように働く環境が激変している現在、リーダーの役割は以前と変わらないのでしょうか?
今回の記事では、今まで私がリーダーとして経験したことも振り返りながら、今後のリーダー像について考えてみます。
カリスマリーダーに憧れて、失敗もした私のリーダー時代
店長として常に数字に追われる毎日
私は前職ではパチンコ業界で約20年間勤務していました。全国展開している大手法人だったので、約20年で十数回も転勤し、いろいろな店舗の店長を務めました。当然ですが順調な店舗もあれば、立て直しが必要な店舗もありました。
全社の向かう方向や企業のブランディング、営業方法などは、どの店舗でも基本的には同じですが、細かな施策は、市場環境や地域性、立地や店舗規模など、様々な要因に左右されるので、店長の考えで変わってきます。
店舗の現状を把握して、未来をイメージしながら目標を設定し、計画を立て、戦術へ落とし込み、実行していくわけですが、店舗によってはうまくいくこともあれば、そうでない場合もあります。
他の業種同様、パチンコ業界でも年間や月間の予算があります。月間の売上や粗利の予算を日割の予算に割り振り、毎日進捗を確認し、その数値を元に、翌日以降の営業計画も修正していくのです。周辺の店舗にどれくらいお客様が入っているのかを調べるため、スタッフが実際に他の店の客数を数えにも行きます。会社によって違いはありますが、一般的には一日に数回は他の店舗へ見に行き、自店と他店を比較して、来店客数は多いのか? 市場全体の客数はどれくらいか? などを分析するのです。
多くのパチンコ店の店長は、毎日毎日売上や利益、客数といった数値に追われ、数字に一喜一憂し、常にストレスを感じていました。私も結果が出ない場合、悩んで自分自身を追い込んでしまうこともありました。前の店ではうまくいったのに、今度の店で思うような結果が出ないのは、スタッフのレベルが低いせいじゃないのか? と、苛立ちがスタッフに向いてしまうこともありました。
今から考えれば、当時の自分が情けなく、スタッフにも本当に申し訳ない話です。しかし、当時の私は追い詰められており、実際に「少し鬱っぽかった」とまで言われる時期もありました。今振り返ってみても自分でもそう感じます。
問題があるのはスタッフはなく自分だった
そんなある時、何となくスタッフを見ながら、いろいろ考えていたときに、ハッとあることに気づいたのです。
店舗が違うから、スタッフが違うのは当然のことだ。前の店と同じようにできるはずがない。
それにしても、この店舗のスタッフは、何故こんな事が出来ないのだろうか?
そうか、たぶん知らない、やった経験がない、未来のイメージが見えていない、などが原因なのだろう。
知らないのは、教えてないからだ。
やった経験が無いのは、やらせてないからだ。
未来のイメージが見えていないのは、伝えきれてないからだ。
これらは全部、店長である自分がやるべきことなのではないか。
数値や結果だけじゃなく、全体を見て店舗運営しなければ。
目標が達成できないのは、スタッフが悪いせいではない。スタッフを育て導くことをしていない私にこそ責任があるのだ、と気付いた時には本当にスタッフに申し訳ないという気持ちがこみ上げてきました。
大事なのはスタッフを信頼し、権限委譲すること
スタッフを育て導くといっても、そう簡単ではありませんでした。新しい店に着任した時は、どんな店にしたいのかという私の想いや、自分の今までの経験や知識やスキルをスタッフと共有するところから始めます。
新しくオープンする店の場合は、新しいチームとして始められますし、オープンまでの準備期間に集中してスタッフの教育をする時間が取れるので、大変でしたがまだやりやすかったのです。
しかし、うまくいっていない店舗の立て直しの時は、店を普通に営業しながら、元々その店にいるスタッフたちと私との考え方や方向性を合わせるのに、新しい店以上に時間がかかりました。
時には、その店にあった文化や価値観を否定しなければならないこともあり、伝え方を 間違えるとスタッフの反感を買いました。スタッフと対話を重ねながら、なぜ今までのやり方、考え方を変えるのか? という理由をスタッフ一人一人が納得するまで伝えられないとうまくいかず、何度も大変な思いもしました。
そうやって、私とスタッフ全員の目指す方向が一致し、スタッフ一人一人の知識やスキルも上がってくると、お互いに信頼関係が生まれます。そうなれば、権限を委譲してスタッフに任せられることはやってもらい、私は最終確認と、店長としてやるべき仕事に集中することができました。そこまでチームが育つと全体がうまく回るようになります。とはいえ、そこに行くまでが大変で、新店舗に移るたびに苦労しました。
店長をやっているときは無我夢中でしたが、何回もチームを作る経験させてもらえたことは、今の私の財産になっているのです。
昭和の時代を牽引してきたのは、大きく旗振りして力強く引っ張っていく、カリスマ性のあるカッコいいリーダーでした。私は彼らに憧れ、私も「いつかカッコいいリーダーになりたいなぁ」と思って、それまで頑張っていました。
職場で働き始めた頃には、売上や店舗数が右肩上がりに伸びていき、私も順調に昇進していったのですが、「カッコよくいなければ」と肩肘張って仕事をしていた頃の私は、店長でありながらも、リーダーとしては未熟でした。そのことを気づかせてくれたスタッフには本当に感謝しています。
リーダーの役割とは?
リーダーとは先頭となるもので、「頭領」ならび「統領」の意味合いを持ちます。つまり組織の中では、リーダーシップを発揮する人がリーダーとなります。
リーダーシップと似た言葉にマネジメントがあります。この2つは混同されやすいですが、リーダーシップの目的は「方向性を示し組織を導く」こと、それに対してマネジメントの目的は「設定した目標に沿って組織を運営する」ことです。
では、リーダーの役割とはどういったものなのでしょうか?
私はリーダーの役割は次の4つだと思っています。
- 目標の設定と共有
- 働く環境の整備
- 人財育成
- メンバーの模範となること
1.目標の設定と共有
達成したい目標や目的が無ければ、組織の進む方向が定まらず、迷走します。リーダーはそういったことが無いように、常に目標や目的を設定することが必要です。
目標や目的はメンバーと共有しておくことが重要になります。これにより、リーダーとメンバーの意見の食い違いを回避し、同じ方向に進むことが可能となります。
更に言うと、チーム内での価値観の共有までしておくと、より効果的です。
同じ目標に進むとしても、スピード重視なのか、結果重視なのか、プロセス重視なのか、メンバー間で価値観に違いがあると、進め方にもギャップが生まれ、メンバーがストレスを感じてしまいます。お互いが気持ちよく働くためにも、価値観の共有まで意識してみてはいかがでしょうか。
2.働く環境の整備
リーダーが働きやすい職場環境を整えることで、業務をスムーズに進め、高い生産性を実現することが可能になります。また、チームのメンバーがストレスを抱えずに高いモチベーションを維持するためにも、職場環境は重要なポイントになります。
設備や人員配置、コミュニケーションに問題が出ていないか気を配り、何か問題があれば解決する必要があります。
3.人財育成
リーダーはチーム全体を見るだけでなく、個々のメンバーを育成することも心がける必要があります。経験やスキルが不足しているメンバーにも積極的に仕事を任せ、困っている場合は適切にフォローします。
メンバーの行動に対するフィードバックも定期的に行います。リーダーが適切な評価や指導を行うことで、メンバーは自身の成長やスキル向上を実感できます。メンバーの成長により組織も成長し、目標を達成するための大きな力となります。
4.メンバーの模範となる
メンバーをまとめるためには、リーダーが模範となって信頼を獲得しなければなりません。
模範となるためには、誰よりも目標達成に向けた情熱がある、ということを行動で示します。業務の手順を熟知する、規則を守るといった簡単なことでも十分です。模範となるリーダーのもとでは、メンバーも高いモチベーションで目標達成に向け行動できるでしょう。
土台となるのは、やはり信頼関係です。リーダー自らが役割を果たそうと行動することで、メンバーからリーダーに対する信頼が上がり、信頼が上がることで更にリーダーとしての役割が果たしやすくなる。リーダーが真摯な態度で地道に行動することが、リーダーとメンバーの信頼関係を徐々に強化し、少しずつチームとしての成果を生み出していくのです。
昔のリーダーが、前で大きく旗振りをしてあとのメンバーを引っ張っていくイメージでしたが、現在はリーダーとメンバーが一緒にスクラムを組んで皆で前に進んでいくイメージでしょう。
令和の時代のリーダーに求められるもの?
では、働く環境も大きく変わった今、リーダーの役割は変わったのでしょうか?
結論から言うと、役割は何も変わっておらず、変わったのはやり方でしょう。
例えば、
・「これだから今の若いヤツは…」とか「俺が若い頃は~」と、昔の話をする
・部下に対して、自分自身の成功体験を話すのが好き
・気合や根性という、精神論を示す言葉が好き
・飲み会(飲みニケーション)に誘ったら、部下は参加するものだと考えている
・部下は上司の背中を見て育つものだと考えている
・部下に仕事を依頼する際に、目的を伝えない
・部下を褒めることよりも、叱ることが多い
・心のどこかで長時間働くことが美徳だと考えている
上記のような行動は、昭和のリーダーシップ(私が社会人として働き始めた時はすでに平成でしたので、平成のリーダーシップかな?)と言えます。
現在では働き方改革や在宅勤務が進み、部下と直接コミュニケーションを取る時間が少なくなっているのではないでしょうか。しかし、信頼関係を築くためにもコミュニケーションは必要です。5分のオンラインミーティングをするなど、こまめに顔を会わせて、何かあったときは相談できるようにしておくことが、信頼へと繋がります。
メンバーへの伝え方にも工夫が必要です。仕事を依頼する時には必ず目的を伝えることです。そうすることで、部下は、その目的を達成するにはどうすればいいのかを考えながら業務に取り組むことが出来、それにより成長もするでしょう。自分の背中を見せているだけでは無駄に時間がかかるだけです。部下一人一人の仕事レベル、価値観を把握して、その人に合わせてきめ細やかに対応する必要があります。モチベーションの維持、メンバーの成長のためにも、良い所を見つけて褒めて伸ばすことも重要でしょう。
最後に
リーダーシップを発揮することは、いつの時代でもチームには必要なことです。しかし、時代の流れや環境の変化に対応していくためには、その時代にあわせて、リーダーの行動を変えていくことが求められています。
環境の変化への対応が遅くなると、その代償は大きくなります。過渡期である現在だからこそ、早めの対応を意識してみませんか?