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COLUMNコラム

2021.06.06

テレワーク下の部下とのコミュニケーションで気をつけるべきこと

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、出社を少なくするために、在宅勤務を導入している会社が多くなりました。オフィスへの出社が制限されることで、働き方が変わりストレスを感じている人も多いのではないでしょうか。

 

エン・ジャパン株式会社が約1万人の働く人たちを対象に2020年6月に行った調査では、テレワーク実施中に、約7割が「コミュニケーションが変化した」と回答し、その変化について「対面でのコミュニケーションが減った」「コミュニケーションの総量が減った」と答えています。コミュニケーションを取れていないことは何に影響があるかという質問に「ストレス」が上位に上がっています。

 

 

こんな話が聞こえてきます。

 

そばにいれば「ちょっといいですか?これって・・・」と声掛けして数分で完了する相談でも在宅だと相手が目の前にいないため、仕事の邪魔になるのでは?と考えてしまい連絡しずらい・・・。

 

同僚や先輩からのフォローや話を聞いてもらうというのが、ストレスの蓄積の予防になっていたのに、在宅勤務になり直接顔を合わせる時間が少なくなりそういった機会が少なくなってしまった。

 

会議の前後にあった雑談時間がオンラインミーティングでは取れず、コミュニケーションが少なくなってしまった。

 

今後は必須になるテレワークでのストレスマネジメント

充分に整備されていない業務体制での在宅勤務や顧客との対面制限という環境変化、仕事の将来性への不安などの職場起因のストレス要因と家庭・家族からの欲求の変化など仕事以外の要因が重なりやすい状況、かつ、出社時には得やすかった上司・同僚からの支援といった緩衝要因も少なくなっていることから、今後、メンタルヘルス不調が増えていくのではないでしょうか。

 

コロナ禍がきっかけで普及したテレワークですが、テレワーク可能な業種や職種では、コロナ禍以前の職場に戻ることはなく、頻度等の差はあれ、テレワークは定着の方向にいくと思います。これからは、管理職は、テレワークが当然のものとしてのマネジメントが求められます。部下のメンタルヘルス対策も当然含まれます。

 

今までは、職場に出社していれば、自然に会話や独り言などが耳に入って来て、人となりや仕事、プライベートの状況などが何となく分かった、日々一緒にいることで、調子の良さ、機嫌、仕事が上手くいっている・何か問題が出ているなどがキャッチできていたものが、在宅勤務では得にくくなります。また部下同士の関係性もわかりづらくなります。テレワークが進めば進むほど、職場のメンタルヘルス対策のキーパーソンである管理職にとって、「いつもと違う」が見えにくくなり、早期把握・発見が難しくなる恐れが出てきます。

 

 

メンタルヘルス対策で重要な「セルフケア」と「ラインケア」とは?

厚生労働省は「労働者の心の健康の保持増進のための指針」(以下「指針」)を定め、職場のメンタルヘルス対策を推進しています。

https://www.mhlw.go.jp/content/000560416.pdf

 

「指針」では、職場のメンタルヘルスケアを取り組むためには、4つのケアを進めることが効果的であると示しています。

4つのケアとは

・セルフケア
・ラインによるケア(ラインケア)
・事業場内産業保健スタッフ等によるケア
・事業場外資源によるケア です。

この中から「セルフケア」と「ラインケア」について見ていきましょう。

 

 

セルフケア

「セルフケア」は最も基本的なメンタルヘルス対策で、心の健康に関する知識を従業員自身に身につけてもらうことで、早期のケアを促したり、自発的な相談行動を増やしたりする効果があります。

 

従業員がストレスを感じる場面は様々です。仕事からだけではなく、健康や家族、人間関係等のプライベートでのストレスもあります。まず重要なのは職場・プライベート関係なく、本人がストレスを感じているということに気付き、適切にケアすることです。

 

在宅勤務では、通勤がなくなったことから運動不足や仕事とプライベートの切り分けが難しく仕事から離れられにくかったり、睡眠リズムの乱れなどもおきがちです。また自宅は、仕事がしやすい環境整備が難しいため、無理な姿勢による腰痛、共に過ごす家族との関係など今までとは違うストレスがあります。

 

『月刊総務』の調査によると、新型コロナウイルスの感染拡大以降において、従業員のメンタル不調の要因が何だと思うか総務担当者に尋ねたところ、「テレワークによるコミュニケーション不足・孤独感」が60.0%で最も多く、「外出しないことによる閉塞感」が56.5%、「新型コロナウイルス感染への不安感」が54.9%と続きました。(n=255)

出典:月刊総務
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000004.000060066.html

 

調査が示すように新型コロナウイルス感染症の影響で、感染への不安、外出自粛や行動制限、将来への不安といった今までにないストレスの影響もあります。こういった点も考慮しながら、従業員に対して、セルフケアが行えるように教育研修、情報提供を行うなどの支援が必要となります。

下記の働く人のメンタルヘルスポータルサイトも役立つと思います。

https://kokoro.mhlw.go.jp/

 

 

ラインケア

2つ目の「ラインケア」とは、日頃の職場環境の把握と改善、部下の相談対応など管理監督者が行うケアであり、対象は管理監督者です。直属の上司など管理監督者が、部下のいつもとは違うという異変にいちはやく気づき、職場環境の改善を通じたストレスの軽減等に適切に対応する必要があります。メンタルヘルスの不調は、本人も気づかぬうちに進行している場合もあり、ラインケアはとても重要です。会社は、ラインケアの対象者である管理監督者に、教育研修、情報提供を行う必要があります。

 

多くの会社では、既に管理監督者が部下の話を聴く技術、傾聴法などを習得するための研修の開催などを行っていると思います。

 

オフィスに勤務していれば、何かあったときにフォローしたり話を聞いたりと日ごろのケアができます。そうやって信頼関係ができている上司なら「実は・・」と話しやすいでしょう。しかし、在宅勤務によりそういった機会が減り、信頼関係が積みあがっていない中で、「部下と話す時間を取ってメンタルヘルスなどの異変に気づいて」などと言われても、どうしたらいいのでしょうか?部下は本当のことを話してくれるのでしょうか?

 

環境が変わった今、前と同じやり方だけでは上手くいかないと思います。コミュニケーションの機会、触れ合う機会が減っているなら、質を上げることが必要です。そのために、次の視点をプラスしたらどうでしょうか。

 

 

部下とのコミュニケーションではひとりひとりのスタイルの違いを意識してみよう

当たり前ですが、人と人は違います。コミュニケーションのスタイルも違います。

その違いは、

  • 表現力が高い人・低い人――自分の思ったこと、感情を他人に発信したい
  • 自分の主張を強くする人・しない人――自分の考えや意見を相手に受け入れて欲しい
  • 柔軟性がある人・ない人――自分と違う考えや状況、行動を受け入れる

と3つの指標があり、人によって強弱があります。

 

たとえば私の場合、ゼロを真ん中にしてプラスマイナス10でつけると「表現力」マイナス8、「主張性」マイナス8、「柔軟性」プラス5です。感じたことの表現や主張は少なめ、人に合わせる という行動スタイルです。これが私の素のコミュニケーションスタイルです。

 

グループで話をする時は、どちらかというと聞き役で、思っていることを積極的に言う方ではありません。意識しないとこうなってしまうため、話し合いを促進したい場面では発言するよう意識しようと心がけています。1対1のコミュニケーションの場では、相手に合わせて上げるようにしています。そうしないと、相手の話もトーンダウンしてしまうことがあるからです。

 

 

こういったコミュニケーションスタイルの違いを考慮しないで話をするとどうなるでしょうか?

 

「表現力」が高く「主張性」が高い上司が「表現力」・「主張性」が低い部下と話す時は、部下は思っていることや言いたいことが言えていない、ということが起きているのです。

 

高い人は言いたいことや考えたことは言えるのが当たり前と思っているのですが、思っていても感じていても、自分から表現しない、主張しない人もいるのです。言わないから「何もない」のではない可能性があることを忘れてはいけません。

 

また、高い人は、先に自分の考えを言うことで相手の言いたいことをつぶしてしまったり、言うのを躊躇させたり、話す量が多めになったりして相手の話す機会を奪ってしまう可能性があることを知っておくべきです。

 

低い上司の場合は、部下のレベルに合わせて上げることで、より相手は話しやすくなり、自己開示がしやすくなります。

 

自分の素のコミュニケーションスタイルのままで相手に合わせずに話をすすめると、せっかくの雑談や面談で、部下が伝えたいことや部下自身も言語化できていない兆しなどを見逃してしまうことになります。

 

 

相手に合わせたコミュニケーションができれば、相手には聴いてくれるという安心感が醸成され、言いにくいことも伝えてもらえる関係が築け、信頼関係も深まっていきます。メンタルヘルス問題の発見だけでなく、業務を進めていく上でもなくてはならないものです。

 

テレワークが進めば進むほど、対面のコミュニケーションの機会が少なくなります。ラインケアを担う管理監督者のコミュニケーションスキルがより重要になってきます。ぜひ、「コミュニケーションの質」にも関心を持って欲しいです。

 

小松 麻利子

小松 麻利子

特定社会保険労務士、アンガーマネジメントコンサルタント

担当地域:近畿を中心に全国

中小企業・自治体職員の働き方改革やハラスメント防止対策を中心にコンサルティングを実施。社員一人一人が強みを活かしてやりがいを持って働けるよう丁寧な支援をしています。