新型コロナウィルス感染症の影響で、テレワークを導入したという会社が増えました。
テレワークを経験した人たちからは、「毎日会社に行かなくても十分仕事ができることがわかった」という声もある一方、こんな声も聞かれます。
「上司や同僚に気軽に相談、報告することができない」
「息抜きに雑談ができず、ストレスを感じる」
「ずっと一人なので、孤独を感じる」
「画面上でのやりとりでは限界がある」
あなたの会社ではどうでしょうか? テレワークはうまく活用できているでしょうか?
テレワークを導入するときは、組織そのものがチームとして機能していないと、同じ空間で顔を合わせて働いている時よりもコミュニケーション上の問題がはっきり表面に出てきて、せっかくのテレワークをうまく活用することは難しくなります。
ではどうすればいいのでしょうか?
私たちは、これまで多くの会社でチームビルディングを導入し、はじめはばらばらだったチームのメンバーが、日がたつにつれて協力しあい、生産性があがったという実例を見てきました。今回はテレワークという互いに孤立した状況の中ではいっそう大事になる、チームとしての生産性の上げ方について私たちが実際にとりいれてきた方法をお伝えします。
1.テレワークを有効に活用する3つのポイント
テレワークの課題としてよくあげられるのが、「社内の意思決定の仕方をはじめとするコミュニケーションの問題」です。
生産性を上げるために、コミュニケーションを改善するための取り組みをしよう! と考えますが、残念ながらほとんどの場合うまくいきません。なぜなら、テレワークという新しい働き方で生産性をあげるためには、コミュニケーションよりも先に考えなければならないことがあるからです。
テレワークを有効に活用するためには次の3点が重要になります。
①どのような会社を実現したいのか? を明確にして全員で共有する
②組織を再構築する
③メンバー一人一人の強みを理解し、適材適所で人材を配置する
1-1.どのような会社を実現したいのか? を明確にして全員で共有する
まず、何のためにテレワークを取り入れるのか? テレワークに取り組むことでどのような会社を実現したいのか? を明確にして全員で共有することです。テレワークの導入は、会社の方針やビジョンがセットになってはじめてうまくいくものなのです。会社の方針や目標が明確で、社員全員で共有されていれば、一人一人が会社の目的に沿って自律的に考え、判断できる基準ができるのです。
1-2.組織を再構築する
これまで同じ空間で長時間一緒に仕事をしてきた人々が、テレワークという新しい働き方で生産性を上げるためには、組織のあり方を作り直す必要があります。そのために私たちが勧めているのがチームビルディングです。私たちの言うチームビルディング(最強のチームビルディング®)は、チームの一体感を増すような単発的な取組みのことではなく、「今いるメンバーで業績(生産性)をあげるチームづくり」を継続的に行っていくことです。
最強のチームビルディング®では、「人材力」「組織力」「関係力」の3つのポイントを意識しながらチームづくりを進めていきます。3要素のどのレベルに組織の問題があるのかを把握し、そのポイントから改善することで、働き方を再構築していくうえでの再現性を高めているのです。
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「人材力」とは、人と人とは違う、ということを、自分も周囲も理解し、それぞれの強みを活かし合うことを大事にすること。
「組織力」とは、そんな多様なメンバーが集まって成果を出すために、共通の目的・目標やルールなどを決めるということ。
「関係力」とは、多様なメンバーの強みを活かすコミュニケーションを理解し実践するということ。
現場で働く人々のこれらの3つの力が、それぞれどれくらいのレベルにあるかを知り、ボトルネックとなっている力を底上げすることにより、チーム全体の力を上げていきながら、組織の働き方を再構築していくのです。
ここで大事になるポイントは、チームづくりは、「人材力」⇒「組織力」⇒「関係力」の順で強化しないと上手くいかない。ということです。例えば「人材力」が充分に整っていない状態で、「組織力」や「関係力」改善の手を打っても、大きな効果は得られないということです。
つまり、「人材力」が整っていない段階で、コミュニケーションを改善する取組を行っても、結局は「人材力」を原因とする別の問題が発生するのです。最強のチームビルディング®の専門家である私たちは、組織というものをそのように捉えています。
1-3.メンバー一人一人の強みを理解し、適材適所で人材を配置する
あなたは一緒に働くチームのメンバーの強みをしっかり把握できていますか?
もしもチームのメンバーの強みを把握できていなければ、テレワーク導入後に適材適所で人の配置をすること、つまりメンバー一人一人の能力・特性などを正しく評価して、その仕事にふさわしい人が、ふさわしいタイミングで仕事ができるように配置することが難しくなります。
この「人の能力・特性」のことを、私たちは人の強み=「人材力」と呼んでいます。能力というのは、その人が生まれ持った能力や、それまでのキャリアで培ってきた知識や技術のことをいいます。例えばテレワークを導入するにあたっては、一人一人にパソコンやオンラインに関する知識がどれだけあるか?を知り、ITの知識が不足している人には、必要な教育をします。簡単に言うと、これが「人材力」を上げるということです。
特性というのは、その人の感じ方や価値観、それらをどう表現するかの違いを言い、仕事の得意・不得意にも関わってきます。特性は本人にとっては「できて当たり前」のことであるため、自分ではそれが自分の特性だと分からないことが多いのです。周囲の人がじっくりと向き合って伝えてあげるか、特性の診断ツールを使って把握しなければ分かりません。
一緒に働く人々が、お互いがお互いの特性を知り、一人一人の特性を自分たちの仕事でどのように活かせるかを知ることが、「人材力」を上げていく取組となります。
メンバー一人一人をどう動機づけるか、それぞれのメンバーにはどういう仕事が向いているのかを見極めるためには、まず、その人の感じ方や価値観といった特性を知った上で、適切な役割を与えることが重要です。
「A君は数字(収益性)を考えるのはいまいちだけど、創造力や企画力は素晴らしいね。」
「B君は人との関係性を築くのは上手くないけど、数字の事なら彼に聞けば間違いないよね。」
「では、A君の出した数々のアイデアのうち、利益を上げられそうなものをB君に選んでもらおう。」
というふうに、個人の特性を見定めて、チームの構成を考え、それぞれのメンバーの持つ短所は他のメンバーの長所で補えるにはどうすればいいかを考えるのです。
このようにそれぞれのメンバーの長所・短所を知って初めて、テレワークにおいて生産性を上げるために、そのチームにあった仕組ができて「組織力」が上がり、チームのメンバーが、お互いに適切なコミュニケーションを取ることもできるようになって「関係力」も上がります。そうなって、初めて適材適所を実現できる組織が生まれるのです。
2.テレワークで組織の生産性は下がっている
ここで実際にテレワークを導入した企業の現状を見てみましょう
企業のテレワークの導入は昨年(2019年)まではなかなか進まず20%未満でしたが、今年は新型コロナウィルス感染症の影響で一気に進みました。内閣府の令和2年6月の調査によると、正規雇用者の42.2%がテレワークを経験しています。
雇用形態別テレワーク実施状況
出典 新型コロナウイルス感染症の影響下における 生活意識・行動の変化に関する調査
(内閣府令和2年6月)
https://www5.cao.go.jp/keizai2/manzoku/pdf/shiryo2.pdf
また、テレワークを経験した人の大部分が今後もテレワークの継続を希望していることが分かります。
出典 新型コロナウイルス感染症の影響下における 生活意識・行動の変化に関する調査
(内閣府令和2年6月)
https://www5.cao.go.jp/keizai2/manzoku/pdf/shiryo2.pdf
このような状況から、企業も様々な人材を確保していくたためには、今後はテレワークを完全に排除することは難しくなっていくと考えられます
しかし、Uniposが行った『「テレワーク長期化に伴う組織課題」に関する意識調査』によると、「チームの生産性はテレワーク開始前と比較してどのように変化したか」という質問に対して、「とても低くなった」「やや低くなった」と回答した人の割合は合計44.6%となり、「とても高くなった」「やや高くなった」と回答した合計の7.6%を大きく上回っています。
出典『「テレワーク長期化に伴う組織課題」に関する意識調査』(Unipos)
この結果からも、企業がテレワークを継続し、人々が望んだ働き方をするためには、働く人々がテレワークでもいかに「組織の生産性」を上げていくかを考え、成果を上げていけるかがカギになります。
3. まとめ
新型コロナウィルス感染症の先行きが見えず、働く人の会社で働くことへの考え方も多様化した今、テレワークを導入しながら、組織の生産性をあげることは、企業の成長を考える中で、今後避けては通れない問題と言えるでしょう。
うまくいっていなかった組織が、全員でビジョンを共有し、一人一人が強みをしっかり活かすことで、見違えるくらいに生産性をあげた会社を、これまで私たちは何社も見てきました。働き方が大きく変わろうとしている今だからこそ、メンバー一人一人の能力や特性に着目し、それぞれの強みを活かした組織づくりしたいと考えている企業を応援したい、と私たちは考えています。