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働き方改革で生産性を高める2つのポイント

2020.05.07

働き方改革で生産性を高める2つのポイント

働き方改革の中で、注目したいキーワードが生産性です。厚生労働省のホームページにも働き方改革の目指すものとして、

 

我が国は、「少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少」「育児や介護との両立など、働く方のニーズの多様化」などの状況に直面しています。こうした中、投資やイノベーションによる生産性向上とともに、就業機会の拡大や意欲・能力を存分に発揮できる環境を作ることが重要な課題になっています。

 

引用:

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000148322.html

 

と説明されており、働き方改革と生産性の向上は両輪で回していくことが必要だと私たちは考えています。

 

 

生産性の定義

そもそも、生産性ってなんでしょうか?生産性とは、一言でいえばモノやサービスなどの価値をどれだけ少ない労力や資源の投入によって効率的に生み出しているかという指標です。数式では生産性は、投入したインプット量辺りの産出したアウトプット量、と表すことができます。

 


生産性の式
 

 

例えば産出したアウトプット量は、売上や生産量が該当します。一方で、投入したインプット量は労働者数、労働時間、労務費が該当します。

 

2019年4月1日から、使用者は10日以上の有給休暇が付与される全ての労働者に対し、毎年5日間、時季を指定して有給休暇を取得させることが義務付けられました。また、時間外労働の上限規制については、大企業には2019年4月1日から、中小企業には2020年4月1日からは一部の例外を除き適用されるようになりました。今回の法改正は、働き方改革をより現実的なものとするために、規制を守らない使用者への刑罰規定が加えられています。そのため、社会全体、ややもすれば経営者は、有給休暇の取得や時間外労働の削減などに注目し、アウトプットへ対応がおざなりになりがちです。

 

 

インプット・アウトプットの両輪が重要

「労働時間の削減・効率化をするなら、売上や生産量が下がっても仕方がない」と諦める前にお伝えしたいことがあります。それは、有給休暇の取得や時間外労働の削減で捻出した時間や人、心理的余裕を、将来の売上拡大や利益向上につながるような仕組みづくりに費やしていただきたいのです。生産性の2つの側面を見つめ、今までと同じアウトプットを、より短い時間 で行うことも重要ですし、単位時間あたりのアウトプットを最大化することも重要です。この両輪を同時に回し、働き方改革をしながら、儲け続ける循環を創り出すことが最強の働き方改革だと考えます。

 

 

アウトプット量を上げる仕組みづくり

アウトプット量は、自社のビジネスモデルや競争・市場環境の影響を大きく受けるため、市場の変化に敏感になる必要があります。ポイントは、労働時間の削減・効率化で捻出したリソース(人・時間など)を、市場の変化に合わせた事業の開発や対応につながるような活動に投資する循環を創り出すことだと考えます。

 

例えば、日本を代表する産業である自動車産業について見ていきましょう。ドイツの「未来のモビリティのためのナショナル・プラットフォーム(NPM=National Platform For The Future Of Mobility=政府によって創設された研究機関)」は、将来人々の移動手段が、ガソリンやディーゼル車が、多くの電気自動車に代替されるという理由で、今から2030年までの間に国内自動車産業が最大41万の雇用を失うという報告書を出しました。

 

日本でも政府は2030年に電気自動車(EV)とプラグインハイブリッド車(PHV)の新車販売台数に占める比率を2~3割に高める方針で、その目標達成に向け、厳しい燃費基準を設定しています。この転換により、現在使用されている自動車部品は4割削減されるというニュースもあります。

 

新型コロナウイルス感染症の拡大に合わせて、多くの事業主が事業の見直しを迫られているように、変化の大きな現代では、今まで通りの事業での生き残りに疑問を持ち、と正しい危機感も持つ必要があります。

 

 

ある町工場の挑戦

正しい危機感を持ち、アウトプット量を増やす対策を行なっている企業もあります。実際の事例を引用しながら、御社の生産性向上に向けたポイントを紹介していきたいと思います。

 

製造業A社では、今までは大口の企業からの発注が中心だったため、安定して受注が見込める一方で、発注元の企業の意向に左右されやすい状態にありました。その状態を危うく思った経営者は現状を打破すべく、自社商品の開発を決断します。これまでB to Bでしかビジネスを行ってきませんでしたが、B to Cに目を向けることにしたのです。その結果、紆余曲折を経て数年前からオンライン販売で数十万個の大ヒット商品を次々と生み出せるまでになりました。

 

 

どうしてヒットしたのか?

開発当初、自社の技術を使うことはあらかじめ決めていたものの、何を作るかは決まっていませんでした。経営者や経営幹部でアイデアを出し合いましたが、一向にこれだというものは出てきません。そんなことが何日も続いたある日、幹部の一人がこんなことを言いました。

 

「会社のことは働く人全員に関係がある、他の従業員からもアイデアを募ったらどうだろう」

 

そこから彼らは社員やパートの方々に「消費者目線でなんでも意見を言って欲しい!」と意見を募り、会議では誰もが意見を言いやすい雰囲気づくりに努めました。その甲斐もあり、最初は静かだった会議でもちらほら意見が出始めます。

 

そうした中である女性パート社員の意見が注目を集めました。彼女が話してくれたのは出勤前のメイクで困っていること。男性社員は誰もピンときていませんでしたが、女性社員からは共感の嵐で「そんな商品があったら絶対欲しい!」という大合唱だったのです。それを見た経営陣は商品化を目指すことを決めました。

 

その結果、女性パート社員から生まれたアイデアは商品になり、今でも売れ続ける大ヒットとなっています。このヒットのポイントは、全社一丸となって新しいことに挑戦する気風を生み出したこと、普段から良好なコミュニケーションをしていて、誰もが意見を言いやすい人間関係ができていたことです。

 

 

多様性を生かす組織が生産性を上げる

2004年にハーバード・ビジネス・レビューに掲載されたフレミングの論文によると、非常に似通った学問分野の人々で構成されるチームから生まれるイノベーションは平均値こそ高いが、飛び抜けて価値の高いブレークスルーは生まれにくいと示唆しました。一方で、多様な学問分野の人々で構成されるチームは、価値の低いイノベーションも多く生み出すためにその平均値は低いが、ブレークスルーも多く生み出すと報告されています。多様なメンバーの声を活かすことで、職場の活力や生産性に大きな違いが出てくることが調査結果からも読み取れます。

 

つまり、男性社員が誰も共感しなかった女性パート社員の意見が会社を救ったように、まったく共感できない相手の意見さえも受け入れることが多様性を活かすことであり、生産性を上げていくためには必要だということです。

 

 

終わりに

今回の記事では、ある会社の事例を元に生産性を上げる仕組みを紹介しました。継続的に企業が発展するためには、生産性というアウトプットと効率性というインプットの両輪を回すことが大切です。そのためには、自社および自部署の生産性の現状や構造を正しい視点と正しい危機感で認識・分析して、適切な一手を打つことが重要となります。特に日本の多くの企業では、多様性を生かすことが、組織の生産性向上の鍵を握っていると感じております。

 

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上松 恵子

上松 恵子

株式会社オフィスリブラ 代表取締役

担当地域:全国

働き方改革・業務改善の研修やコンサルティングを多数実施。対話型で本音を引き出し、それぞれの企業にとって最適な課題解決方法を探すこと、確実なアクションと変化につながる支援を信念としています。