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COLUMNコラム

2022.03.01

人財を育て職場を変える掃除の力

皆様の職場では、人財育成は順調ですか?

 

企業が当面する経営全般の課題として、「人材の強化」が上昇しています。

 

 

企業の経営課題を経年で調べた日本能率協会の調査によると、2021年の第1位は、2020年同様に「収益性向上」でしたが、その比率は減少(45.1%から40.8%)。 一方、「人材の強化」が昨年の31.8%から37.7%、「売り上げ・シェア拡大」が30.8%から35.2%へと増加しました。

 

コロナ禍が続くなか、当面の経営課題として、売上を回復させていくことが大きな課題となっていますが、そのためにも人材の強化が重視されていると考えられます。

出典:日本企業の経営課題2021 日本能率協会

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000016501.html

 

「ヒト、モノ、カネ」という、企業経営や組織運営に欠かせない言葉がありますが、その中でも「ヒト」が企業にとって重要な経営資源のひとつであることは周知の事実です。

 

だからこそ、企業は優秀な人財を採用することに予算をかけ、入社してからも人財教育に投資します。

 

 

人財育成とは何か?

 

人財育成とはその名のとおり「人を育てる」ことですが、具体的にはどのようなことをいうのでしょうか?

例えば、従業員が業務の遂行に必要な知識と技術を身につけられるよう、教育・訓練を実施する取り組みは狭義で「人を育てる活動」と言えます。

 

ですが、人財育成の「本質」は単なる人財の戦力化ではなく、「理念の実現に貢献できる人財を育てること」。ここを正しく認識した上で人財育成を捉える必要があります。

 

業務遂行の教育・訓練をする、目標面談を実施する、なども人財育成です。では、心の醸成についてはどのように考えればいいのでしょうか?

 

 

私がやってきたクリーンマインドの実践例

クリーンマインド本気プロジェクトが始まった

私がパチンコ店で勤務している時に、実際に取り組んだのがクリーンマインドです。

クリーンマインドとは、単に清掃をすることではなく清掃を通して職場と心を磨くことを指します。

 

前職でのクリーンマインド制度導入の背景には、店舗拡大につれて「店舗のクオリティ」の格差が激しくなり、「クリンリネス」においては同じチェーン店とは思えない状態が散見されるようになったという状況があります。

 

『相手の期待を感じ取り、その期待を上回ること』と、お客様に提供するサービスを定義していました。しかしながら、その頃の私たちは汚いことに気付けないようになっており、これは大問題であると、掃除を通して職場と心を磨く「クリーンマインド本気プロジェクト」が立ち上がりました。

 

1年目は「知る」、2年目は「わかる」、3年目は「できる」をテーマとして、3年間かけてクリンリネスを立て直してきました。

 

その後、クリーンマインド本気プロジェクトを通して得たノウハウを精査し、「やるべきこと」と「やるべき時期や期間」を定め定期的・継続的に取り組めるよう制度として継続した取り組みとなりました。

 

従業員一人ひとりが職場の5Sに取り組むことで、一人ひとりの心に、心の3Kが醸成される。職場と心を磨くクリーンマインドのサイクルです。

 

 

5Sに取り組むことで、3Kの心が醸成される

5Sとは、「整理、整頓、清掃、清潔、躾」のことです。特に製造業では良く知られているのではないかと思います。

 

3Kとは、「行動する心、感謝する心、感動する心」です。
まず行動するよう意識が芽生え、その後周囲に感謝出来るようになり、最後に感動出来るようになる、ということで順番も大事です。

 

掃除をすることで、「こんな所も汚れているな」と気付くことがあります。これを続けることで、仕事においても気付く力が養われます。店内の汚れだけでなく、お客様の様子などを観察する力も高くなるのです。そのように、市場の変化や業務の課題などに気付く力が上がれば、対応も早くなります。

 

また、気付いた汚れをすぐにキレイに出来る行動力が養われると、課題解決に向けての行動力向上にも繋がります。

 

掃除の手際が良い、要領よく工夫する、ということになれば、業務効率も向上するでしょう。

 

デスクの整理整頓が出来ていないと、必要なモノや書類を探さなければならないので、それだけで無駄な時間が発生します。

 

掃除を継続していると、自然と道具を大切に扱うようになります。汚れた雑巾で汚れを落とそうとしても効率が悪いとわかりますし、古い掃除機の吸引力が悪く、新しく掃除機を買い替えただけで、感謝出来るようになります。

 

これらは、言われて理解できるものでもなく、自分が実際に体験することで理解できるものなのです。

 

 

プロジェクトをやって気付いたこと

私は、店舗の店長としてスタッフ用トイレの掃除を行っていました。これは私だけでなく、全国で多くの店長が実践していました。

 

掃除を続けることにより、キレイになれば純粋に気持ちいいですし、他のスタッフも気を付けてくれるようになりました。

 

そうすると、どのようにすれば効率よく掃除できるかとか、汚さないような工夫を考えるようになりました。

 

更には、スタッフに気持ちよく使ってもらえるよう、トイレの居心地が良くなるよう装飾なども行うようになりました。

 

 

コミュニケーションが潤滑になった

また、定期的にエリア内の1店舗に各店舗から数名が集まり、掃除をするような活動も行っていました。店長やマネージャーもいれば、新卒社員やアルバイトのスタッフもおり、役職や立場は関係なく一緒に掃除をしていました。共に汗をかくことは、一体感の醸成に役立ちました。

 

このおかげでタテヨコだけでなく、ナナメの人間関係も築くことが出来、これが人事異動後のコミュニケーションのきっかけにも繋がることとなりました。

 

事務所には喫煙ルームがあり、ガラスで仕切られているのですが、どうしてもタバコのヤニがついてしまいます。綺麗にガラスを拭くのは大変なことです。ヤニを取るだけでなく拭き残しも無いようピカピカにするために数回拭きます。ちょっとした運動ですね。

 

喫煙室の扉もガラス扉なのですが、私がピカピカに拭いた直後に素手で触られて指紋がベッタリついている時はかなりショックでした。

 

実際に掃除をした人間はこの気持ちがわかりますが、掃除をしていないとわからない。だから素手で触ってしまうのです。だから、使った人が掃除をしましょう、とも伝えてきました。そうすることで、掃除を楽にするよう使い方も変わりますし、掃除してくれたことへの感謝の気持ちも芽生えます。自分で使って、自分で掃除していれば、いろいろと工夫も生まれるのです。

 

 

副次的な効果もうまれた

事務所内を常に整理整頓された状態にしておくことで、メーカーの営業担当から「他の法人と比較しても、事務所がいつもキレイですね」と言われることもありました。整頓された事務所でお客様をお迎えすることで、企業イメージの向上にもつながるでしょう。

 

定期的に地域のゴミ拾いを行うこともありました。地域のお祭りや花火大会の翌日などに参加したり、通常の日でも自店舗の駐車場だけでなく、店舗の周りを数名で行ったり様々です。

 

このような経験は、ゴミが落ちていることに対しての気付きのレベルを上げてくれます。また、自分ではポイ捨てをしなくなります。

 

私の上司の話ですが、子供と歩いている時にゴミを拾っていたら、それを真似て子供もゴミを拾うようになったという、思いもしないような効果もありました。親の背を見て子は育つ、ということですね。

 

 

人財育成をどう行うか

人財育成の目的・目標

人財育成の目的は、従業員一人ひとりを成長させることにあります。

 

企業は人の集合体です。すべてをそつなくこなせる人財がいなくても、個々が自分の得意分野を磨きスキルアップできれば、全体で見れば武器を持った組織となります。

 

また、一人ひとりの従業員が業務スキルだけでなく、人間的にも成長してより大きな仕事ができるようになれば、企業は発展していきます。

 

企業にとって人財育成の目標は「経営戦略を自発的に実行し、成果を残せる人財を育てること」です。

 

なぜなら、企業は収益を上げるために活動をしている営利組織だからです。

 

全ての従業員の能力を最大化させることで事業の成長につなげるために、従業員に理念を理解してもらい、個々の能力・スキルを高めて事業に貢献してもらうことが目標となります。

 

 

人財育成の考え方

人財育成は、単なる人事施策の域を超えて経営層を巻き込んだ長期的な取り組みです。

 

また、VUCAの時代ともいわれる現在、市場環境の変化のスピードは非常に速くなっているため、求められる業務スキルも刻一刻と変化していきます。誰もが、専門領域を持ちながらも常に新たな領域を学び続ける必要もあります。

 

企業は、人財育成について長期的な視点を持ちながらも、人財のスキルが陳腐化しないように市場環境の変化に合わせて新たなスキルを身につけられるように支援していく必要があるでしょう。

 

そのためにも、従業員一人ひとりの心の醸成が必要となります。企業として支援体制が万全となったとしても、従業員が受け身の姿勢で取り組んでいれば、自らで考え行動することも出来ずに、市場環境の変化には対応しきれないでしょう。

 

繰り返しになりますが、企業は人の集合体です。企業の成長には、人財の成長が必要であり、人財が土台となります。

 

職場をキレイにするのが目的なら、業者にアウトソーシングすることで問題ありませんが、従業員の心の醸成には繋がりません。アウトソーシングしながらも、やれる範囲は自分たちで掃除をすることで、清掃業者に対しても感謝出来るようになります。

 

 

育成環境を整える

 

掃除をするには、環境を整えることも重要です。

 

現在のコロナ禍の環境でしたら、当然アルコールなども必要となります。終業後にデスクを拭いて帰ることにしていた場合、雑巾とバケツを用意しておくよりも、ウェットティッシュなどを用意しておく方が手軽に拭けます。

 

箒と塵取りより、掃除機の方が早いでしょう。他にも掃除の便利グッズ等、今では様々なものが売られています。

 

最初は最低限のモノで構わないので、実際に掃除をすることで必要なものが出てきます。掃除をすることを習慣化するには、継続することが大事であり、その為にも手軽に掃除できるような環境が必要なのです。

 

 

人財育成で迷ったら、まず掃除から始めてみましょう

人財育成で何をやっていいのかわからないのなら、まずは掃除をすることをオススメします。

 

掃除は、

  • やれば誰でもできます。
  • 皆が一緒に実践可能です。
  • 莫大なコストも必要ありません。

 

掃除をしてキレイになったという結果により、小さな成功体験を積み重ねることが可能となり、これが自信につながります。

 

実際に掃除をやってみることで、今まで見えなかったことが見えるようになります。

 

土台を整えるきっかけとして、掃除に取り組んでみてはいかがでしょうか?

 

上口 幸博

上口 幸博

株式会社豊明コンサルティング 代表取締役

担当地域:全国

最大手パチンコ法人にて約20年勤務。在籍中に働き方改革の取り組みへトライアルから参画し、全国展開への礎を築くことに尽力。現在は独立し、チームビルディング、アンガーマネジメント、働き方改革のコンサルタントとして活動中